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『シンデレラの罠(Piège pour Cendrillon)』(創元推理文庫 平岡敦訳 2012.2.29)はフランスの小説家であるセバスチアン・ジャプリゾ(Sébastien Japrisot)が1962年に上梓し、フランス推理小説大賞を獲得した作品である。 訳者あとがきを読んで、本作…
かつて日本に「アグネス論争」というものが勃発した。1987年頃から約2年間続いたそうである。当事者である歌手のアグネス・チャンを中心に巻き起こった論争をコンパクトにまとめるのは容易ではないので、ここではアグネス・チャンと小説家の林真理子の…
今頃になってこだまのデビュー作『夫のちんぽが入らない』を読んでみた。「普通」にできない、「当たり前」に生きていけない人たちへのエールという捉え方に文句を言うつもりはなく、実際に同様な苦悩を抱えている人たちには励みとなる作品ではあるのだろう…
ところで『対論 1968』で一番おどろいたのは村上春樹に関する部分だった。 「いずれにせよ村上春樹の小説は、そのつもりで読み直してみると腑に落ちるところがある。これまでの作品でほとんど唯一、単行本化されていない『街と、その不確かな壁』(『文…
1968年頃の日本の学生運動に関してちょっと興味があり新書ということもあって、本書を手に取ってみたのであるが、「専門用語」だらけで何がなんだかよく分からない。巻末には「新左翼党派の系統図」が載せてあるものの、アニメにでもしてもらわないと覚…
ようやく蓮實重彦の『ショットとは何か』(講談社 2022.4.29)を読み終えて、ところでamazonのレビューではどのような評価をされているのか調べてみたところ、驚いたことに事実誤認があるとして批判されていたので、そのことを改めて検証してみようと思う。 …
当初本書の刊行は1990年末だったが、延びに延びて今年になって上梓され、直後に著者の山根貞夫が癌で亡くなったということはそういうことだったのだと思う。 本書はフィルムコレクターに関する実話で、それ以外にもロシアの国立映画保存所ゴスフィルモフ…
『大江健三郎の「義」』(尾崎真理子著 講談社 2022.10.18)には驚いた。大江健三郎の小説は平田篤胤と柳田国男と島崎藤村に多大に影響を受けているというのである。全く気がつかなかった、というか平田篤胤と柳田国男など全く読んでいないのだから仕方がな…
江戸川乱歩はG・K・チェスタトンの短編集『ブラウン神父の童心/ブラウン神父の無心(The Innocence of Father Brown)』に収録されている「透明人間(The Invisible Man)」(1911年)に関して「おそらくポーのこの作品(「盗まれた手紙」)から着想を得…
モーリス・ルブランの『金三角(Le triangle d'or)』(1917年)は本文でも言及されているように、エドガー・アラン・ポーの『盗まれた手紙(The Purloined Letter)』(1845年)に着想を得て書かれたものであるが、アーサー・コナン・ドイルの『ボ…
ただタイトルに惹かれて久しぶりに「アルセーヌ・ルパン」シリーズの一篇を読んでみたのだが、それは決して良い意味ではなく推理小説のタイトルとしてははっきり言ってダサいのではないかと思ったからである。しかし「金三角」の原題は「Le triangle d'or」…
引き続きフランスの小説家のアラン・ロブグリエが1976年に上梓した『幻影都市のトポロジー(Topologie d'une cité fantôme)』について論じてみたい。 本書の中の「第一の空間/女神ヴァナデの廃墟と化した神殿の構築 5 供犠の船(Premier espace : Cons…
(2023年3月14日付毎日新聞朝刊) 『文学界』の5月号と『群像』の5月号に文芸評論家の蓮實重彦が亡くなった大江健三郎に追悼文を寄せている。『文学界』に掲載されている追悼文に拠るならば、1935年1月生まれの大江と1936年4月生まれの蓮…
(2023年2月26日付毎日新聞朝刊) 毎日新聞の「村上春樹をめぐるメモらんだむ」を読んで知ったのだが、1月29日放送のTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」で以下のようなコメントをしている。 今日の言葉はロシアのプーチン大統領の言葉です。「ニュ…
川端康成の新潮文庫版『眠れる美女』には表題作の他に「片腕」と「散りぬるを」が収録されており、三島由紀夫が解説を書いている。正直、三島の解説は難しくて上手く把握できないのだが、この文庫版は川端自身によって編まれたと書いている(p.247)。それを…
Bob Dylan - Blowin' in the Wind (Official Audio) 『ハーバード大学のボブ・ディラン講義』(リチャード・F・トーマス著 森本美樹翻訳 萩原健太監修 ヤマハ 2021.3.10)の中で「風に吹かれて」に関して興味深いエピソードが紹介されている。まずは引用し…
川端康成の「BL作品」として「少年」が文庫本として刊行されたのであるが、本物のBL作品として読んでみたもののがっかりする読者もいるのではないかと思うが、「レベル」というものは様々だから仕方がないとも思う。例えば、大正6年1月18日付の文章を引…
J・D・サリンジャーの『フラニーとゾーイ』に関して、小谷野敦の『聖母のいない国』(河出文庫 2008.8.20)の議論を取りあげながら考察してみたい。 小谷野は『聖母のいない国』の「サリンジャーを正しく葬り去ること」という章で『フラニーとゾーイ』を扱…
1953年に発表された「バナナフィッシュにうってつけの日(A Perfect Day for Bananafish)」のラストで主人公のシーモア・グラースが自殺したことから「グラス家(Grass Family)」の物語は始まり、本著はその謎解きを試みたものであるが、論理の説得力…
「グラス家(Glass family)」構成メンバー 父親:レス(Les Glass) 母親:ベシー(Bessie Glass) 長男:シーモア(Seymour Glass) 次男:バディ(Webb Gallagher "Buddy" Glass) 長女:ベアトリス(ブーブー)(Beatrice "Boo Boo" Glass Tannenbaum) …
今更ながら村田沙耶香が2016年に芥川賞を受賞した『コンビニ人間』を読んでみた。 主人公の古倉恵子は大学生の頃からアルバイトとしてコンビニエンスストアの店員として働いており、正社員になることもなく同じコンビニで18年間働いている。コンビニ店…
たまたま図書館で目にした蓮實重彦の『伯爵夫人』(新潮文庫版)を手に取って、今更ながら読んでみたのであるが、驚いたのは小説のほとんどを占めるポルノグラフィックな描写よりも、そのような描写が終わろうとしていた後の物語の展開の方である。 伯爵夫人…
2022年1月7日の深夜にテレビ朝日で放送された『ラスアイ、よろしく!』の「祝2022年!霜降り明星・粗品 生誕スペシャル!」においてメンバーの小澤愛実と鈴木遥夏が、霜降り明星がM1で優勝した漫才ネタを完全コピーしたことによって、かつて2017年9…
たまたま書店で『映画評論家への逆襲』(荒井晴彦、森達也、白石和彌、井上純一共著 小学館新書 2021.6.8)を見つけて、かなり期待しながらページをめくってみたが、実際に映画評論家へ逆襲しているのは最後の第七章だけで、他はミニシアターにおけるトーク…
(2021年11月19日付毎日新聞朝刊) 小室圭の母親と彼女の元婚約者の金銭面における問題は、小室圭が元婚約者と一日会っただけで解決してしまった。小室圭の母親の「400万円」の借金トラブルが報じられたのは2017年12月だから約4年の歳月が…
小説家の島田雅彦は『小説作法ABC』(新潮社 2009.3.25)の中で小林多喜二の『蟹工船』(1929年)に関し、例文を挙げながら(新潮文庫版 p.40-41 岩波文庫版 p.38-39)以下のように評価している。 「はっきりいって、あまり面白くありません。元祖プ…
(2021年8月22日付毎日新聞朝刊) 東京パラリンピックのアーチェリー・男子リカーブ個人の日本代表として出場予定だった長谷川貴大は普段は日本テレビの「NEWS ZERO」を担当するディレクターということもあって8月18日の放送では司会の有働由美子…
チャールズ・ブコウスキー(Charles Bukowski)の遺作『パルプ(Pulp)』(ちくま文庫 2016.6.10)の訳者あとがきで柴田元幸は冒頭で次のように書いている。 「ニック・ビレーンは史上最低の私立探偵である。」(p.305) どうもこの評価に納得しかねるのは、…
(2021年8月5日付毎日新聞朝刊) 上の写真を余計な言葉を取っ払って要旨だけを簡潔に述べるならば「20歳の女性が大切にしているものを72歳のおじさんが自分の口の中に入れている」のである。 このような特異な性癖は普通ならば専門の風俗店へ行っ…
『まわり舞台の上で 荒木一郎』(荒木一郎著 文遊社 2016.10.15)において荒木は自分の仕事の仕方を以下のように語っている。 「荒木 やりたいとか、あんまりそういうふうに考えない。自分がないんだよ、だから。いつも言うけど、主張はあるよ。けど、『自分…