『家族ゲーム』 100点

家族ゲーム

1983年/日本

ネタバレ

‘主’のパラドックス

総合★★★★★ 100

ストーリー ☆☆☆☆☆0点

キャスト ☆☆☆☆☆0点

演出 ☆☆☆☆☆0点

ビジュアル ☆☆☆☆☆0点

音楽 ☆☆☆☆☆0点

 本作の有名なシーンである、、テーブルに横一列に並んで食事をする沼田家の4人と家庭教師の吉本勝を正面から捉えた構図を指して、現代の家族のディスコミュニケーションを象徴していると言われるが、これは必ずしも正確な指摘とは言えない。兄の沼田慎一が訪れるガールフレンドの家族は対面するように座っており、戸川純が演じる近所に住む住人が沼田千賀子と会話しているシーンでは、隣に接して座ることを窮屈に感じた彼女が千賀子と対面するように座り直すからである。だからテーブルに横一列に並んで食事をするシーンは現代の家族の暗喩ではなく、沼田家という一家族にとっての暗喩なのである。
 『家族ゲーム』を改めて観直すと、暴力シーンの多さが目につく。沼田茂之は同級生たちからイジメを受けており、吉本勝からも暴力を受けることになる。茂之の国語を担当している教師の、点数が悪い生徒の答案用紙を教室の窓から校庭に投げ捨ててしまう行為なども今なら完全に暴力と見倣されるであろうが、本作のテーマであるはずの暴力は巧妙に隠蔽されている。沼田家は主の沼田孝助の支配下に置かれているのであるが、息子の金属バットによる殺人事件を恐れている孝助は、直接手を下すことを避けて、家庭教師の吉本を雇って‘教育’の名の元に暴力を行使しているからである。
 父親の思い通りに茂之は‘父親’が希望する高校に合格し、気を良くした孝助は本人の意志を無視して慎一の大学受験を強要することになる場面で、突然、吉本が‘反乱’を起こす。今や沼田家を支配しているのは父親ではなくて吉本なのであり、沼田家の4人は黙って吉本がひっくり返したテーブルの後片付けをするしかない。
 そして意味深長なラストシーンを迎える。千賀子は彫刻をしている手を止める。外から聞こえてくるヘリコプターの音が気になったのである。子供部屋を覗いたら2人とも昼寝をしており、その2人の様子を見て安心した母親も眠ってしまう。役割を終えた吉本はもはやいない。父親も出かけている。彼らが外で何かをしているということは不気味なヘリコプターの騒音で暗示しているのであるが、とりあえず‘暴力’を振るう‘主’がいない間は、家でくつろいでいられるのである。
 しかし『家族ゲーム』は監督としての森田芳光にとっては両刃の剣になったと思う。俳優などに指示を出し、必然的に‘主’として振る舞わなければ作品を作れない映画監督が‘主’を否定するような作品を撮ったからであり、結局は、森田監督は『家族ゲーム』を越える作品は撮れなかったように思う。